トイレの自立に向けて

 トイレの自立と言っても、それまでにおむつから解放されなければなりません。
 おむつを外す事も大変な子どももいれば、簡単に外れる子どももいる様です。
 おむつから解放されてから、トイレの自立を考えて欲しいです。
 1983(昭和58)年前後の事、私の勤務していた療育施設に、養護学校(今の特別支援学校)に通う女子高校生がいました。彼女は、アテトーゼ型の脳性麻痺で上肢が全く使えず、でも下肢が器用に使えて独歩もできていました。
 女の子で悩む事もあり、女性のOTと絶え間なく相談し、床に座り込んでその前に食事をセットすれば、フォークとスプーンを足の指でうまく使い口に運んでいました。「どんな格好でも自分で食べた方が、食べさせてもらうよりおいしい」と彼女は言っていました。彼女の言葉はアテトーゼ型の特徴ある発声でしたが・・
 食事だけではありません。トイレ等も一人で行えるように、OTと共に考え出したのです。その方法とは、洋式トイレを使用して、トイレ内の壁に上下二個のフックを付け、そのフックに下着やスカート等の尻の上を引っ掛けて、しゃがんだり立ち上がる事で下着やスカート等を脱ぎ着する様に考案したのです。便などを終えてからの処理については私もOTも若かったので、お互いにちょっと恥ずかしくて¥レしく尋ねる事ができませんでした。でも、トイレを一人で行っている事を聞きました。
 こんな体験をしている私に、クラッチ歩行もできるが通学等では電動車椅子を使っている男子高校生の保護者から「トイレの自立が難しい。用を終えた後に尻に手が回らず、尻を拭く事ができない」と、保護者と子どもの悩みを伺ったのです。
 同じ様な悩みを持っていながら、すでに克服している親子、今自立に向けて努力中の親子、この様な親子に尋ねて得た情報をまとめてみました。

 高等部卒業までに、しっかりと仕上げていきたい課題です。
 女の子と男の子では、自立までの過程に違いが有ります。
 性を分けて記しますが、重複箇所も出てきます。
目次
(1) 性を分けなくとも良い年齢まで
(2) 男子・二分脊椎
(3) 女子
(4) トイレの自立に当たってのこぼれ話
→◎○↓○◎←
(1) 二次性徴が始まるまで…男女共通・・
 四つ這いで移動することがほぼ無くなり、独歩と伝い歩きで移動する様になると、本格的に自立トイレ練習になるのかなぁ〜
 「伝い歩きや独歩ができるようになり、完全にトイレも自分一人で行って帰ってくるようになりました。」こう話される保護者は多いです。
 しかしそれ程簡単な事ではないようなのです。座位や立位でのバランスも悪いのに、子どもにとっては少し高い便座、そこに座り「用」をする事だけでも大仕事なのに…
 高い便座、トイレの周囲や前方に踏み台を設けている家庭も有るようです。
 幼児などで尻が小さいと、便座の中に尻が落ち込んでしまい転ぶ事は無くても、尻の始末ができなかったり、便座から抜き出せない事が有るようです。
 便座を小さくする事で問題が解決する事もあるようです。反面、便座を小さくする事で、股の間に手が入らず(後ろから手を回しても同じ事)の為に、大きな便座で工夫している方が多いようです。
 大きな便座では、男子の小便は尻が落ちてももれずに良いとの事で、女子や大便は前の方に座るとの事です。
 下着などの上げ下げですが、物に捕まって行なう子どもと、不安定な姿勢で行う子どもに分かれています。家庭内のトイレ事情によるものと思います。
 女の子のスカート、年齢が高くなると問題も起こるようですが、この年齢ではズボンよりも使いやすいようです。短い為に…
 女の子は年齢が高くなると生理が始まります。その時の事も考慮に入れて指導したいです。小便や大便の拭き方や衣類などを汚さない法等…
 大便後の処理ですが、色々と処理法を試行錯誤した結果、不自由な手でもってトイレットペーパーを持って処理する事は難しく、トイレに流せる赤ちゃんのお尻拭きを使い、それでうまく処理ができるようになってからトイレットペーパーに変えるようです。
 尻の拭い具合ですが、最初はうまくいかずに下着を汚す事もあるようですが、徐々にうまくなっていくようです。
 拭き方を問題にする前に、そこに手が回らない事が起きているようです。私が施す訓練内では、手を後ろに回すストレッチが組み込まれていますが、この様なストレッチを受けていない時には、とても難しい課題になるようです。トイレの外で、衣類を着けたままで拭う練習をする親子もいる様です。
 ウォシュレットの使用ですが、我が国の家庭での普及率が8割り程度だとか? 私の実家(山の中の田舎)にも普及したのだろうか?
 老人の私にも便利なウォシュレット! 手の不自由な子どもにも便利ではないかと考えるのですが、保護者の考え方は…?
・ 基本的に使わせない。理由は…
 外で使用する際に不衛生かもしれない。外にあるトイレにはウォシュレットが付いていない事が多い。何処のトイレでも用ができるようにしておきたい。等々…
・ 使わせる。理由は…
 きれいにできるから。そうでなくてもいろんな面で時間がかかるのを短縮できる。手で拭いてもきれいに拭けないから。等々…
・ どちらでもない。理由は…
 上に上げたそれぞれの理由のようです。
◎ これが私の二次成長期までのまとめです。
 最後に面白い事が保護者の返答の中に書かれていたので、ここに紹介しておきます。
 我が子にトイレの事を色々聞いていたら、「どうしてそんな事を聞くの?」と、疑問を感じたらしく、経緯を話すと、得意げに、「私がトイレのポイントをメモに書くよ!」と話していました(笑)。
→ 子育て家庭だけじゃない 「おしりふき」を活用する3大メリット | 節約の達人
https://manetatsu.com/save/2017/11/2965/

(2) 男子がトイレの自立に至るまで…
 男子のトイレの自立は、幼児期からの積み重ねで良いようですが、思春期を迎える頃から少し異なるようです。
 正常小児における二次性徴の開始年齢は男子では10歳から13歳と言われています。ですからこの頃迄に幼児のトイレ介助風景から男性のトイレ介助風景に変えておきたいです。
 開始時期が遅れた事によって、恥ずかしいと言って拒まれては指導ができません。反面、何歳になっても恥ずかしい心が育たないのも困りますが…
 男子が便座に座って小便をする時、幼児期から起きていた事ですが、思春期を迎えると更に陰茎が大きくなるので外に漏れやすくなり、便器の外に漏れないようにする為に、陰茎を下向きにして便器の中に排尿する事に注意するようです。
 “男子(独歩可能で知的障害)の母は、チャックのズボン、ベルトが盲点。小便をする時に男性用トイレを使う考えがなく、排尿は洋式便座に座り、ゴムのズボンで日々を過ごしていたところ、入学前の教育相談で小便はできる限りチャックを開けてお尻を出さず用をたす様にと指摘され、母親が教えられる訳がないと大慌てで、男性の教師に相談し練習を始めたこともありました。”
 男子だからと決めて立位での便器を使う事を考えた時、何時まで女性の介護者とトイレに入れるだろうか? 入れないから立位トイレ練習はしない? この問題は、多目的トイレ内に男性用の立位用便器を敷設してあれば問題は解決するのだが…
 男性用トイレ内に自由に出入りできて、トイレが自立している男の子でなければ何処のトイレも自由になるとは言えないようです。
◎ 男子のトイレについて記す事が少なかったので、二分脊椎症の子どもについてのトイレを考えてみます。
“二分脊椎症の子どものトイレは…”
 二分脊椎症の子どもで、ほとんど排尿排便に問題無い障害と、排尿排便を感じられない子どもに分けられ、その子どもに応じた自立法を速く学びたいです。
 二分脊椎症によって運動に必要な筋が動かないだけでなく、排尿排便の感覚が無かったり、腹圧がかけられずに排尿排便ができなかったり、外肛門括約筋が閉じられずに便が常に漏れたりと、想像以上の課題が存在します。
 排尿排便のにおいと色は、体調管理に大切です。専門の所で指導を幼児期から受けて、独立の生活ができるように育てていきたいです。
 肢体不自由の乳幼児を診ているから専門だと思い込む事は恐ろしいです。リハビリセンターや専門病院、総合病院などの二分脊椎症の治療と指導に当たっている医療機関で指導を受けて欲しいです。
 排尿排便が自立できない事によって、世の中に出て行けない事にならないように、早期から正しく指導を受けましょう。
 専門の所では、いろんな二分脊椎症の子どもを診た実績が有り、役に立ってくれるのでは……
◎ 排尿排便後の清潔だけでなく…
→ 清潔に保つ方法 | SEXOLOGY
https://sexology.life/body/how_to_keep_it_clean/
 お母さんが男の子の入浴介助をしていた時など、特にこのサイトを見て勉強して欲しいです。

(3) 女子がトイレの自立に至るまで…
 幼児期からの延長でトイレの自立は続いていますが、大小の便の著利はそのままの練習を続けても、新たに生理の始末が始まります。
 正常小児における二次性徴の開始年齢は女子では8歳から12歳頃と言われています。
 「月に1回のもので 頻繁に処理をするのは日中、ほとんど学校でとなっています。学校の先生のご指導が不可欠です。」この様に言われる保護者もおられます。
 大変と感じるのは二種類の著利が必要だからのようです。
 今はいろんな生理用品が出回っており、個人に合わせて使用する様に何処にも書かれていました。しかし手足の不自由な女性についての著利方法は何処にもなかったので、保護者の意見を参考に記します。
T 経血の著利は?
 「生理用ナプキンは、下着からずれないようにテープが貼ってあるものが多いですが、粘着力が強く、余計なところに張り付いてよれてしまうなど、私自身もたまにありますので、そこら辺の処理ができるのかなぁ〜?」あるお母さんの思いです。
 「生理用品をつけた下着を上げ下げするのは至難の業です。」
 「漏れを防ぐために、大きなナプキンを使う方が多いようです。」
 「オムツ型のナプキンを利用している方もおられます。オムツと同じなので漏れることもなく安心だそうです。」
 「オムツ型のナプキンでもいいかな?と思っていたのですが、本人いわく、夏は暑いし、毎回ズボンまで脱ぐのが面倒だそうで、なんとか自分でやろうと頑張っています。」
 「外出する時は、その外出時間に合わせて、ナプキンを2枚重ねたり3枚重ねたりして出かけ、トイレの度に一枚づつ剥がして捨てていく方式でやっています。時間がない時でも袋から出して剥がして貼る時間が短縮できて良いみたいです。」
 この様な意見が主に有り、アイデアとしては次の様な物もありました。
 ナプキンと吸水ショーツの併用が便利のようです。
U 秘所の汚れをどう著利するか…
・ ナプキンを取り換えるからそこで吸収させる。
・ トイレットペーパーで拭い清潔にする。
・ トイレに流せる尻拭きを使う。
・ ウォシュレットできれいにする。
 こんな意見が有りました。中には次のような意見も…
 「ウォシュレットで清潔にし、水分をきれいに拭き取れないので残った水分はナプキンと吸水ショーツに吸い取らせ、たまに漏れる少量の尿・経血・ウォシュレットの水分…、外側は防水機能があるので漏れる事も無く安心です。」
◎ 排尿排便の著利も大変なのに、女性特有の様々な作業が大変です。
→ 清潔に保つ方法 | SEXOLOGY
https://sexology.life/body/how_to_keep_it_clean/
 皆さんでいろんな事を共有し、不自由な身体で自立しようとしている子どもたちを保護者と共に助けて行きたいです。

(4) トイレの自立に当たってのこぼれ話
 トイレの自立に向けて、努力された保護者の体験を寄せてもらった今回、それぞれが体験された内容中に、トイレの自立とは直接関係ないだろうが、肢体不自由だから困るいろんな話が入っていました。幾つかを紹介します。
・ 二分脊椎症の中学生…
 「電動車椅子で学校見学に電車で一人で行って帰って来る途中で、腹痛と臭いに気づき、途中下車して、始めて1人で下痢だらけのオムツ替えをしてきました!
 どうやって替えたのか聞いてみると・・・
 先ず便座に座り、オムツをとり、お尻を拭いて、車椅子にテープ式オムツをセットして、車椅子に乗り移りオムツセットして、ビニールに汚れたオムツを入れ、臭わないビニールに入れて持って帰ってきました!!」
→ 子どもは困った事でしょうが、素晴らしい体験を子どもはしたのでは…。コレからどの様な体験が増えるのやら・・・
・ 脳性麻痺の二十歳の大学生…
 「トイレでは立位で、片手で手すりに掴まり、もう片方の手で上げ下げし、左右の手を替えて右側、左側共に上げ下げします。
 ウォシュレット機能ありますが基本的に紙で拭くようにしています。自宅外のウォシュレットが衛生的に心配だからです。
 左手で手すりを掴み、右手を回して拭いています。右手の方が左手より巧緻動作が可能なので。
 大学の寮では多目的トイレがありますが棚はないので、車いすにアンダーネットを付け、生理用品やおしり拭き常備しています。
 屋外では多目的トイレ使用し、おしり拭き等持ち歩いています。」
→ 私たちにとってはどんなトイレが有ってもそれで良しとしますが、肢体不自由の方々にはそれなりのトイレが必要だと世間の人に知ってもらいたいです・・・
・ 脳性麻痺の高校生…
 「トイレに関しては、下げたズボンがトイレの床につかないようにするのが大変です。キュロットのような足回りが太くてヒラヒラしてるものは、ストーンと床まで落ちてしまいます。
 あと3本くらい手があれば もうちょっと上手にできそうなんですけどね。」
・ 原因不明の障害の中学生…
 「実は中学入学前に本当に慌てて取り組んだのが、制服のプリーツスカートでの便座への着座です。
 正直スカートならパンツだけを下げればいいから簡単だと女である私自身も想像していたのですが、制服が届いてから家で試してみると、トイレに入室しても肝心なパンツすら下ろせない状態でした。
 理由は、制服のプリーツスカートはその名の通りプリーツをつけている為、前部分を持ち上げてもスカート全体が持ち上がらないので、手がパンツまで届きづらいうえに、パンツが下りてもお尻の部分をまくり上げることができないということからでした。
 確かに、私たちでもロングスカート等、生地の多いスカートはまくりあげるのはテクニックがいる訳で、片手で手すりを掴みながらプリーツスカートをまくり用を足す事は大変なことだと試してみて初めて気がつき特訓をしたとの苦い思い出です。」
→ 二人の女の子はスカートも履きたいでしょうが、トイレが邪魔をしてスカートも履けないとは…。私も昔話ですが、二分脊椎の子どもから「傘で雨の日は歩きたい」と訴えられた時、できない相談なのに悲しい思いをしました。その子は両手にクラッチを持って歩くのだから、傘を持つ手が無いのです。
・ 女子中学生…
 「吸水ショーツを便利に使っていますが、当然パンツは臭ったり汚れはつくので、本人にパンツの下洗いを毎日の入浴時にしっかりやらせることで折り合いをつけている感じです。(その後洗濯機で洗う)」
→ 肢体不自由の障害になったばかりに、移動法や姿勢保持に悩むだけでなく、毎日の生活にも工夫が必要で、アイデアの出る保護者はそれを試しながら体験を増やす事ができますが、アイデアが出ない保護者は他人の真似や参考にするのが良いのでは・・・
 他人のアイデアや情報を得るためにも、アンテナを広く高く上げ、お友だちを増やしておきたいです。
・ 脳性麻痺の中学生…
 「水分をあまり摂らないので、硬めの大便のため綺麗にふけています。」
→ 水分摂取が少ない事で、尿も少なくトイレに行く回数も減り、大便の処理も容易かもしれませんが、水分は身体に必要な物ですからしっかりと摂取したいです。
・ 保護者の悩みの一つが…
 「トイレの話だけでこれだけの困難があるので、将来の生活全般の困難では想定外ばかりのことだと思うと、この先の我が子の人生がどうなるのかなと考えるだけで頭が痛くなります。」

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 (training)@xpost.plala.or.jpにお願いします。(training)を「ls-cc」に書き換えてお願いします。

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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美